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● ビールとインターネットで投票率を上げる方法

                   諸野脇 正@インターネット哲学者
                  【e-Mail】 ts@irev.org
                  【Web Site】 http://www.irev.org/
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■ 投票に行くとビールが飲める
 
 早稲田大学周辺商店街では、参院選に向けて次のような企画をおこなう。
 

 早稲田大学(東京都新宿区)かいわいの商店でつくる「早稲田大学周辺商店連合会」(475店舗)は参院選の投開票日以降、投票した人に特別なサービスを用意する「選挙セール」を企画している。若者の投票率が低迷する中、学生街の店主たちが考えた苦肉の策だ。
 セールでは、投票所で受け取る「投票済証」を加盟店で見せれば、サービスが受けられるようにする。ランチにコーヒーがついたり、ビール1杯が無料になったり。〔『朝日新聞』2004年6月12日、夕刊〕
 
 
 この「選挙セール」という企画は面白い。
 投票に行けばビールが飲める訳である。それならば、投票に行きたくなる若者が増えるであろう。
 これは選挙のインセンティブを変える試みなのである。
 
 
■ 選挙のインセンティブ
 
 私は次の文章で選挙のインセンティブを論じた。
 
  ● GLAYが選挙を変えるかもしれないという話
      −−選挙のインセンティブを分析する
   http://www.irev.org/senkyo/glay.htm
 
 この中で私は次のように述べた。
 

 土建屋と一般の人とでは、選挙への熱心さが違う。気合いの入り方が違う。
 それは、インセンティブが違うからである。選挙の重要さが違うからである。
土建屋にとって、選挙は非常に重要である。生活がかかってる。だから、選挙活動に強く引きつけられる。選挙活動をしたくなる。
 だから、土建屋の意向の方が通りやすくなっている。
 現状では、このように選挙結果は歪んでいるのである。
 この歪みを正すためには、どうしたらいいのか。より多くの国民の意向を選挙結果に反映させるには、どうしたらいいのか。
 インセンティブを変えればよいのである。
 
 
 現状では、非常に投票率が低くなっている。そのため「熱心な人」の意向が通りやすくなっている。土建屋の意向が通りやすくなっている。無駄な公共事業がおこなわれやすくなっている。
 つまり、選挙結果は歪んでいるのである。
 歪みを正すためには、インセンティブを変える必要がある。
 インセンティブを変える試みとして、ビールはよい。
 
 
■ 選挙管理委員会「お墨つき」
 
 この早稲田大学周辺商店連合会の試みについて選挙管理委員会は次のように言う。
 

 公選法上の問題はない。投票率アップに取り組むことに敬意を表します。
 〔『朝日新聞』同上〕
 
 
 特定の候補を応援してビールを出すのは問題である。しかし、この試みは、「投票率アップ」を目指すものである。何の問題もない。
 選挙管理委員会も「公選法上の問題はない」と言っている。言わば「お上のお墨つき」である。
 心配性の方もこれで安心であろう。
 同様の企画を様々に考えてみよう。
 
 
■ 和民でビールを
 
 例えば、次のような企画が考えられる。
 

 投票した人には、和民でビール一杯を無料にする。
 
 
 大手居酒屋チェーン和民でビールを一杯無料にするのである。和民は、大規模チェーンである。和民が企画をおこなえば、より多くの人が投票に行きたい気持ちになるはずである。
 この企画は十分実現可能性がある。あまりコストがかからないのである。既に、和民は店舗の近くでビール無料券を配っている。ビール無料券を配れるならば、投票者にビール一杯を無料にすることも可能であろう。ビール無料が呼び水になって、売り上げがあがることが考えられるからである。また、マスコミで報道され、投票率アップに積極的な企業として評価があがる可能性もある。だから、十分に実現可能性がある。
 このような企画を様々に考えることが出来る。居酒屋だけでなく、他の業態でも同じような企画が可能であろう。
 多くの企業・個人が様々な企画を考えることで、選挙のインセンティブを変えることが出来る。
 
 
■ インターネットによる投票を
 
 インセンティブを変える本筋は、ネットによる投票の実現であろう。
 先の文章で私は次のように書いた。
 

 インターネット上で投票が出来るようになれば、インセンティブが変わる。自宅で簡単に投票できるようになれば、インセンティブが変わる。携帯電話から簡単に投票できるようになれば、インセンティブが変わる。今まで棄権していた人が投票するようになる。
 例えば、現状では、雨が降ると投票率が下がっている。しかし、インターネットによる投票が実現されれば、自宅から投票できるようになる。だから、雨が降っても投票率は下がらなくなる。
 例えば、現状では、旅行に行くという理由で棄権する人がいる。しかし、携帯電話のネット機能を使って投票できれば、旅行先からも投票できるようになる。だから、棄権する人は減る。
 
 
 インターネットや携帯電話で投票が出来るようにするのである。ネットで投票できれば、投票は簡単になる。投票所まで行く必要がなくなる。
 また、ネットによる投票であれば、投票日を一日に限る必要もない。一週間、一ヵ月のような長い投票期間を取ることも可能である。
 既に、株主総会の投票において、ネットによる投票が実現している。
 

 配当額や取締役選任など株主総会の議案にインターネットで投票できる仕組みが急速に広がる。今年5、6月の総会シーズンにはネット投票が可能な企業が250社と前年より5割増え、東京証券取引所に上場している企業の1割を超す。
 〔 NIKKEI NET:総合企業情報 「株主総会、ネット投票250社に拡大
――個人・外国人取り込み」2004年6月18日〕
 
 http://company.nikkei.co.jp/special/sp015/index.cfm?newsId=j576h001_17&newsDate=20040617
 
 250社が、既にネットによる投票を導入している。技術的にはネットによる投票は可能なのである。後は、やる気の問題である。
 本気で投票率を上げたいのなら、ネットによる投票を実現するべきである。
 
                                      (2004年7月9日)
 

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 ◆インターネット哲学【ネット社会の謎を解く】◆ 051号掲載
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   http://www.irev.org/file/touroku.htm
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